藻場の育成・植物の栽培・藻類の培養に活用できる海洋施肥剤の開発
我が国の沿岸域では、近年「貧栄養化」と言われる海水中の栄養塩レベルの低下、それに伴う魚類の餌不足をきっかけとする食害による藻類の生育不足、藻場の減少などが起こっています。貧栄養化の原因として、我が国の高度な排水処理技術により海洋へ流れ込む窒素やリンが減少したことが挙げられています。
弊社では貴金属のリサイクルを行う過程で、高濃度の窒素を含んだ液が発生します。現在は放流基準を遵守した上で下水道放流しており、下水処理場でさらに窒素が取り除かれています。
「海で窒素が足りない一方、陸地では窒素を取り除いている」という矛盾に弊社は着目し、下水道放流している窒素を有効活用できるよう、広島大学の山本名誉教授との共同研究により、安全性を確認しながら肥料製造についての技術開発を進めてきました。開発した肥料を用いたラボ試験、疑似現場試験、フィールド実証試験などを繰り返し行い、色落ちしたノリの色調を確実に回復する効果を確認しました。
開発した肥料は、養殖ノリに限らず、他の藻類や植物への適用、広くは藻場の育成などにも利用できるものと考えております。ご興味ある企業、団体の皆様からのご連絡をお待ちしております。
図 資源循環イメージ
出典:松田産業資料
図 施肥材の実証実験
出典:松田産業資料
陸域CCS/CCUSと組み合わせた国内ブルー水素製造事業
北海道三笠市では、未利用資源である石炭の地下ガス化や、木質バイオマスと露頭石炭の混合によるガス化により、水素を製造する事業に取り組んでいる。水素製造過程で発生するCO2は、かつての石炭採掘跡に圧入し貯留・鉱物化させるCCS/CCUSにより、CO2排出量実質ゼロを目指す。
石炭・木質バイオマスガス化イメージ
出典:三笠市HP
CO2固定イメージ
出典:三笠市HP
明治時代から石炭産業により発展した三笠市の地下には、多くの未採掘の石炭と、石炭の採掘跡が現存している。石炭はCO2を吸着する性質がある上、採掘跡の空洞は地圧によって潰れながらも空隙が多数存在する。これら地域の特性を活かして、CO2及びCO2と反応して固化するスラリーを圧入することで、CO2削減に加え、地盤の安定化に寄与する陸域CCS/CCUSを目指している。
三笠市では、これらのブルー水素製造を目指す取組みをH-UCG(ハイブリッド石炭地下ガス化)事業と称し、市の4大プロジェクトの一つに位置付けている。H-UCG事業が実用化されれば、「陸域CCS/CCUSと組み合わせた国内ブルー水素製造の地域モデル」として国内外の産炭地に技術展開を図りたい。また、H-UCG事業と他の4大プロジェクト(三笠ジオパーク、三笠高校・高校生レストラン、農業振興)とを相互に連携させ、新たな産業・雇用の創出とゼロカーボンシティの実現の両立を目指す。
三笠市ゼロカーボンシティ構想2050
出典:三笠市資料
なお本事業は「三笠市 H-UCG によるブルー水素サプライチェーン構築実証事業」として、2023年11月、NEDOの「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に採択され、令和7年度までの実証を目指す。
参照URL
https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/hotnews/detail/00014328.html
バイオ炭コンクリートの開発と場内施設への適用
清水建設株式会社は、農地施用において炭素貯留として国のJ-クレジット制度の対象として認められている「バイオ炭」をコンクリートに混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート(以下、SUSMICS-C)を開発した。SUSMICS-Cは、成長過程で大気中のCO2を吸収した木材の炭化物であるバイオ炭を利用し、コンクリート内部にCO2を固定するもので、製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を高炉スラグで代替した低炭素セメントを併用することで、カーボンネガティブを実現できる。
バイオ炭の材料には、針葉樹や広葉樹の製材時に廃棄されるオガ粉を利用。オガ粉を炭化したオガ炭は、他のバイオ炭と比べて炭素を安定的かつ多量に固定できる特徴があり、炭素含有率は約9割、100年後の炭素残存率も約9割に上る。バイオ炭1kgあたりのCO2固定量は約2.3kgであり、コンクリート1m3あたり80kgのバイオ炭を添加することで、約183kgのCO2を固定できる。セメント材料に低炭素型の高炉セメント類を使用すれば、普通コンクリートのCO2排出量と比べて最大118%のCO2削減効果が得られる。SUSMICS-Cは、環境性能のみならず施工性にも優れ、現場でのポンプ圧送も可能で、強度についても普通コンクリートと同等であるため,コンクリート二次製品への適用のみならず、現場でのコンクリート施工にも広く対応できる。
今回、SUSMICS-Cを清水建設の場内工事用道路の仮舗装に実工事として初適用し、実証を行った。セメント材料に高炉セメントB種を使用し、コンクリート1m3あたり60kg/m3のバイオ炭を混入する配合を採用し、普通コンクリート比99%のCO2排出削減効果を実現した。施工数量は34.5m3であり、定量的なCO2削減量は約6.7トンである。普通コンクリートと同様に施工できること、試験体から採取したSUSMICS-Cのコア供試体の圧縮強度が設計基準強度を十分に満足する性能を保持していることを確認した。
今後、脱炭素社会の実現に向けて、SUSMICS-Cの適用範囲を拡大し、仮設構造物のみならず本設コンクリート構造物への適用を進める。併せて、J-クレジット制度での認証など、SUSMICS-Cの環境価値向上に向けた取組を進める。
粉状および粒状のバイオ炭
出典:清水建設Webサイト
実工事への適用
出典:清水建設Webサイト
参照URL
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2022070.html
ダイレクトバイオマス燃料電池の開発
電力中央研究所では、未利用の木質系バイオマスを有効利用するために、小型かつ低コストで高効率な発電が可能なダイレクトバイオマス燃料電池(Direct Biomass Fuel Cells, DBFC)の開発を進めている。DBFC は、ボイラやガス化炉を必要とせず小型化が可能であり、バイオマスを構成する固体炭素と揮発成分の化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換できるため、高効率な発電が期待できる。当所が独自開発したDBFCは円筒形状であり、電池の外側を構成する電極(燃料極)への木質系バイオマス燃料の供給が容易である。バイオマス燃料は700~800℃程度になっている反応容器内に投入され、炭化される。その際に、固体炭素(炭化物)と揮発成分(水素、一酸化炭素などの可燃ガス、二酸化炭素、窒素、水蒸気など)が生成し、これらは共に発電に利用される。また、反応容器内で生成した固体炭素(炭化物)を取り出し、バイオ炭として農地に散布または地中に埋設すれば、植物が吸収したCO2を固定化して環境から隔離することになり、ガーボンネガティブエミッション技術にも繋がる。
ダイレクトバイオマス燃料電池(DBFC)の利用形態
出典:電力中央研究所報告 EX22011
森林吸収によるクレジット創出を推進
ENEOSグループは、2040年自社排出分のカーボンニュートラル実現に向け、重要なCO2除去手段として森林等の自然吸収の活用を進めています。日本国内および森林事業のポテンシャルの高い海外にて、植林、森林の保全、適切な森林管理の実施により自然吸収を増やし、カーボン・クレジット※を創出することで、自社の温室効果ガス排出量をオフセットします。
※カーボン・クレジット: 温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度
森林吸収の増加に向けた取り組み
出典:ENEOS資料
日本国内では愛媛県久万高原町と新潟県農林公社に続き、2023年11月に日本生命と共同で北海道森町における森林由来のカーボン・クレジット(J-クレジット)創出に合意しました。こうした森林を活用した事業への関与は、国内林業振興にも寄与できると考えています。また、海外では北米における大型森林ファンドへ出資しています。
さらなる事業拡大に向けて、引き続き自治体や林業公社といった森林管理者や、海外パートナーと連携した取り組みを推進してまいります。
参照URL
・カーボンニュートラル基本計画(15ページ)
https://www.hd.eneos.co.jp/company/system/pdf/e_hd_jp_ot_fy2023_01.pdf
・統合レポート(50ページ)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/ir_material_for_fiscal_ym3/142283/00.pdf
港湾構造物に海藻を繁茂させCO2吸収源とする技術開発
東亜建設工業株式会社は、港湾・沿岸域におけるブルーカーボン生態系を拡大させる技術の一つとして、直立の護岸等の港湾構造物への海藻着生に関する技術検討に取り組んでいる。検討では、関東地方整備局の実海域実験場提供システムを活用し、横浜港南本牧ふ頭の護岸に海藻の着生・生育を促す角部を有する突起形状の着生基盤を設置し、モニタリングを行っている。設置約1年後には、着生基盤の上面や角部を起点として、アオサ属等の緑藻類の着生が確認されている。このことから、角部を有する着生基盤を設置し、形状変化を与えることにより、海藻の着生を促し、CO2吸収源となるブルーカーボン生態系の形成につながることがわかった。今後、多様な海藻がより効果的に着生・生育しやすい形状や方策を検討し、技術確立することを目指していく。
スリット式ケーソン護岸と着生基盤のイメージ
出典:東亜建設工業Webサイト
設置約1年後の着生基盤の海藻着生状況
出典:東亜建設工業Webサイト
ブルーカーボンの算定に水上ドローンを活用
株式会社KDDI総合研究所は、三重県鳥羽市、KDDI株式会社と、2022年6月に水上ドローンを活用してブルーカーボン算定に必要な藻場調査の実証実験を実施した。
本実証では水上ドローンはスマートフォンで設定した航路を自律航行し、搭載した水中カメラで対象藻場を撮影しながら海草や海藻の分布面積調査を実施。撮影映像の分析により、海草や海藻が占める面積の割合である被度の把握が可能なことを確認した。従来、鳥羽市で海草や海藻の分布面積調査を実施する場合、ダイバーによる潜水目視を行っていた。今後、水上ドローンの活用により、専門家の意見や判断を取り入れた遠隔での航行や、正確な位置を常時把握した定点観測が可能となる他、ダイバーによる調査の事故発生リスクが低減され、遠隔でのモニタリングや制御が可能なため、大幅な業務DXを期待できる。
この取組は、2023年3月、第31回地球環境大賞*を受賞した。
水上ドローン
出典:KDDI総合研究所Webサイト
第31回地球環境大賞ロゴ
出典:KDDI総合研究所Webサイト
*「産業の発展と地球環境との共生」を目指し、1992年に創設。フジサンケイグループが主催し、経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、総務省、日本経済団体適合会、日本商工会議所後援
参照URL
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2022/08/23/6212.html
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2023/03/01/6574.html
早成桐『ジャパロニア』植栽によるCO2吸収と地方創生
一般社団法人クール・アースは早成桐『ジャパロニア 品種登録申請中』と言う早生樹【4~5年で胸高直径35~40㎝、樹高15m】の種子からの育苗~植樹~育生管理~成木後の各種製品化の開発まで一貫した取組みを行なっており、今年で15年目を迎えます。
2020年には大学機関との共同研究で、42.6㎏/年/本のCO2吸収量の数値化を算出。2021年には国内30都道府県にて約15,000本の試験植栽を行ない、各地で順調に生育中。2023年度も11月までに約6,000本の植栽を実施。
植栽後4~5年で直径35㎝~40㎝ 樹高約15mに成長(左図、中央図)
植栽後、3ヶ月で約3mに生長(右図)
出典:クールアース資料
植栽圃場は主に耕作放棄地【地目変更せず、肥培管理をする事で農地のまま植栽可能】が全体の約80%、残り20%は杉や雑木の伐採後、山林に植栽しており、成木後は伐採し、約70%は内装用軽量合板や建材、家具や楽器他、付加価値の高い製品化に成功、現在量産化を計画し、地産地消完全循環型ビジネスモデルを構築中。 耕作放棄地や荒廃山林を活用し、地方創生、雇用の創出を目指しています。
特に九州地区では一人一本の植栽を目標に『九州ネガティブアイランド構想』を掲げ、1,300万本の植栽計画を推進中。
早成桐地産地消循環型システム
出典:クールアース資料
早成桐で製作した各種製品
出典:クールアース資料
参照URL
早生樹ハコヤナギの試験植林
双日株式会社は、東京大学発のベンチャー企業である株式会社本郷植林研究所と双日モリノミライ株式会社を設立し、本郷植林研究所が宮崎県で試験植林を実施している植林後5年で伐採可能という特長を持つハコヤナギの試験植林を宮崎県・山口県・岡山県・北海道にて開始した。地域に密着した森林資源サイクルを実現することを目指している
本郷植林研究所のハコヤナギ試験植林(植栽後1年)
出典:双日Webサイト
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