森林吸収によるクレジット創出を推進

ENEOSグループは、2040年自社排出分のカーボンニュートラル実現に向け、重要なCO2除去手段として森林等の自然吸収の活用を進めています。日本国内および森林事業のポテンシャルの高い海外にて、植林、森林の保全、適切な森林管理の実施により自然吸収を増やし、カーボン・クレジット※を創出することで、自社の温室効果ガス排出量をオフセットします。

※カーボン・クレジット: 温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度

 

森林吸収の増加に向けた取り組み

出典:ENEOS資料

 

日本国内では愛媛県久万高原町と新潟県農林公社に続き、2023年11月に日本生命と共同で北海道森町における森林由来のカーボン・クレジット(J-クレジット)創出に合意しました。こうした森林を活用した事業への関与は、国内林業振興にも寄与できると考えています。また、海外では北米における大型森林ファンドへ出資しています。

さらなる事業拡大に向けて、引き続き自治体や林業公社といった森林管理者や、海外パートナーと連携した取り組みを推進してまいります。

 

 

参照URL

・カーボンニュートラル基本計画(15ページ)

https://www.hd.eneos.co.jp/company/system/pdf/e_hd_jp_ot_fy2023_01.pdf

・統合レポート(50ページ)

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/ir_material_for_fiscal_ym3/142283/00.pdf

オンサイトでの「CO2資源化サービス」を開始

東京ガス株式会社は、都市ガス機器利用時の排気に含まれる二酸化炭素(CO2)と水酸化物を反応させ、様々な用途で利用可能な炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム等)をお客さま先(オンサイト)で製造する「CO2資源化サービス」(以下、本サービス)を2023年10月より開始した。

本サービスは製品の製造プロセスで炭酸塩をオンサイト利用する工場等の産業用のお客さまを中心に展開していく。加えて、オフィスビルや商業施設等、炭酸塩のオンサイト利用が難しいお客さまに向けても本サービスを展開していくことを目指し、炭酸塩を洗剤や肥料等の製品の原料として利用する等、炭酸塩の利用用途を拡大する取り組みも進める。

 

本サービスのカーボンリサイクルのイメージ

出典:東京ガスプレスリリース

 

今回、ヱスケー石鹸株式会社と共同で、ガス機器排気中のCO2を吸収した炭酸塩(炭酸カリウム)を活用した「CO2リサイクル洗濯用液体せっけん」を開発した。また、ガス機器排気中のCO2を吸収した炭酸塩(炭酸水素カリウム)が肥料として効能があることを評価・確認し、東京ガス独自で「エコカリウム®」という名称で農林水産大臣による普通肥料の登録を受けている。

このようなCO2リサイクル製品がCO2を排出した地域(まち、工場等)の中で利活用される「地域におけるカーボンリサイクル」も視野に、今後、お客さまと共に、CO2リサイクル製品の利用モデル構築を目指していく。

 

液体洗剤パッケージイメージ

出典:東京ガスプレスリリース

 

小松菜の栽培試験による肥料の効能検証

出典:東京ガスプレスリリース

 

参照URL

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20231025-01.pdf

マイクロ波によるCO2吸収焼結体(CO2-TriCOM)の開発

廃棄物にCO2を「取り込む」ことで新たな製品として生まれ変わらせる画期的なカーボンリサイクル技術です。

NEDO※が実施する「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発」の委託事業として、2020年7月から国立大学法人広島大学、中国高圧コンクリート工業株式会社(再委託先:中部大学)と共同で実施しています。

混合した材料にマイクロ波を照射することで,粉状の材料が溶融焼結します。CO2をその過程で吸収し,焼結体に固定化します。

※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

 

 

参照URL

・プレスリリース 石炭火力発電分野のカーボンリサイクル技術「CO2-TriCOM」(シーオーツートリコム)がNEDO公募事業に採択されました

https://www.energia.co.jp/press/2020/12589.html

・中国電力HP 灰カラ三姉妹

https://www.energia.co.jp/business/sekitanbai/sdgs/news_001.html

NEDO事業によるINPEXのCO2-メタネーションの取組み紹介

INPEXは、NEDO事業を通じて世界最大級となる400 Nm3-CO2/hのメタネーション設備を構築し、e-methane(合成メタン)を弊社ガスパイプラインへ注入する実証試験を実施します。

 

メタネーション試験設備(建設予定)3次元モデル俯瞰図

 

メタネーション事業イメージ

 

INPEXと大阪ガス株式会社は共同で、INPEXがNEDOから採択された助成事業のもと、都市ガスのカーボンニュートラル化に向けたCO2-メタネーションシステムの実用化を目指した技術開発事業を2021年より開始し、2023年からは世界最大級となる家庭用1万戸分に相当する400 Nm3-CO2/hの試験設備の建設を進めております。現在、造成工事の大部分が終了し、2023年10月24日より同設備の起工式を経て、プラント本工事に着手しています。当該試験設備は、新潟県長岡市に位置する越路原プラント内で分離・回収した随伴CO2を用いて、e-methaneを製造します。また、実証事業で製造した合成メタンはINPEXの都市ガスパイプラインへ注入し需要家にお届けする予定です。

 

参照URL
https://www.inpex.co.jp/company/movie.html#methanation_movie

CO2からの液体燃料製造技術の開発

出光興産株式会社は、CO2を原料とした化学品製造の実現や炭化水素製造に最も親和性が高いと考えられるフィッシャー・トロプシュ反応(FT反応/合成)*の次世代技術開発と液体合成燃料一貫製造プロセスの構築と最適化、さらに将来のスケールアップに向けた研究開発に参画している。この研究はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業として行われている。

 

FT反応による液体合成燃料一貫プロセス

出典:NEDO Webサイト

https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101410.html

 

さらに人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業を東芝エネルギーシステムズ株式会社、東洋エンジニアリング株式会社等と共に環境省地球環境局が公募した「二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業」にて提案し、委託事業として採択された。

東芝エネルギーシステムズが開発を進めるCO2電解装置を用い、CO2の分離回収からSAF製造、消費までの全工程を実証することを想定した基本計画を作成し、また事業成立性を評価する。

 

CO2資源化を通じた炭素循環社会モデルイメージ

出典:出光興産Webサイト

https://www.idemitsu.com/jp/news/2021/210824_2.html

 

 

また、出光興産がSAFの普及の為に提案する「最先端のATJ**プロセス技術を用いたATJ実証設備の開発と展開」がNEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の一つとして採択された。国内初の大規模SAFサプライチェーン構築を目指し、長期的には上述のような炭素循環社会を見据えている。

 

SAFのサプライチェーン構築

出典:出光興産Webサイト

https://www.idemitsu.com/jp/news/2022/220419_2.html

 

 

*COと水素から触媒反応で石油代替となる液体高水素を合成する反応プロセス

**Alcohol to Jet。エタノールからSAFを製造する技術・プロセス。SAFの国際規格ASTM認証「ASTM D7566 Annex5」として認証されている。

 

持続可能な航空燃料(SAF)の供給に向けて

航空分野では、2020年以降に温室効果ガスの排出を増加させないためのCORSIA※1規制が導入されています。さらに2022年10月、温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにするという目標を国際民間航空機関(ICAO)が採択しました。また日本国内でも、2030年に航空燃料の10%を持続可能な航空燃料(SAF) ※2に置き換えるという目標を国土交通省が設定しています。

こうした動きを見据えENEOSグループは、2025年度までにSAFの輸入体制を構築するとともに、自社製造体制の構築に注力しています。

 

※1 CORCIA: Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviationの略。国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム
※2 持続的な航空燃料(SAF):従来のジェット燃料が原油から精製されるのに対し、廃食油・サトウキビなどのバイオマス燃料や、都市ごみ・廃プラスチックを用いて生産され、廃棄物や再生エネルギーが原料のため、ジェット燃料と比較して約60~80%のCO2削減効果を見込む

 

 

カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けた取り組みの推進

出典:ENEOS資料

 

自社製造体制の構築に向け、  2026年に和歌山製油所設備を活用した年間40万KLの量産体制構築を目指し、フランスのTotalEnergies社と共同検討を進めています。また、豪州においてもSAFの製造設備を開発すべく、Ampol社と共同検討を進めています。

 

 

参照URL

・カーボンニュートラル基本計画(7ページ)

https://www.hd.eneos.co.jp/company/system/pdf/e_hd_jp_ot_fy2023_01.pdf

・統合レポート(47ページ)

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/ir_material_for_fiscal_ym3/142283/00.pdf

プラスチックのケミカルリサイクル

三菱ケミカルグループ株式会社とENEOS株式会社は、プラスチックのケミカルリサイクル共同事業を進めている。廃プラスチックを油化して製造するリサイクル生成油は両社の既存設備である石油精製装置およびナフサ熱分解装置において原料として使用され、石油製品や各種プラスチックへと再製品化されることで効率的なケミカルリサイクルの循環が実現できる。廃プラスチックの油化技術は、英Mura Technology社の水熱分解技術を導入した。三菱ケミカル茨城事業所に、商業ベースでは国内最大規模となる2万トン/年の処理能力を備えた設備を建設し、2023年度中に完工後、廃プラスチック油化を開始する予定である。今後、廃プラスチックの安定調達、プラスチック製品へのケミカルリサイクル品認証及び石油製品への温室効果ガス削減についての認証取得などによる製品の高付加価値化を図る。

プラスチックリサイクルイメージ

出典:三菱ケミカルグループWebサイト

広島県におけるカーボンリサイクル実証研究の包括的な取組

国では,カーボンリサイクルをカーボンニュートラルの実現に向けたキーテクノロジーの一つとして位置づけ,社会実装に向けた技術開発・実証に取り組んでおり,広島県の大崎上島町において,IGCC※1に燃料電池を組み込んだIGFC※2とCO2分離・回収を組み合わせた革新的低炭素石炭火力発電の実証研究「大崎クールジェンプロジェクト」や,そこで分離・回収したCO2を供給できる国内初の施設として,2022年9月,「カーボンリサイクル実証研究拠点」を整備するなど,取組を加速している。

広島県では,国の取組と一体となり,このカーボンリサイクルを足掛かりに,工場等から排出されるCO22を資源と捉え,CO2が生物や化学品,燃料等,様々なかたちに変化しながら,自然界や産業活動の中で,大気中のCO2を増加させることなく,持続的に循環する社会経済「カーボン・サーキュラー・エコノミー」の実現を目指し,2021年から,全国に先駆け取組を開始した。

2022年3月には,カーボン・サーキュラー・エコノミーの実現に向けて,カーボンリサイクルを核とした新たな産業集積を目指すための方向性や今後3年間の取組を整理した「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想」を策定し,産学官による「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会(通称:CHANCE※3)」を通じたマッチング支援や,県独自の研究・実証支援制度「HIROSHIMA CARBON CIRCULAR PROJECT」による研究資金支援を開始するなど,取組を本格化させている。

※1 Integrated Coal Gasification Combined Cycle

※2 Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle

※3 Council of HiroshimA for a carboN Circular Economy

 

広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想

https://hcce.jp/concept/

 

広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会

https://hcce.jp/

 

HIROSHIMA CARBON CIRCULAR PROJECT

https://ld.lne.st/2022/09/14/hiroshima-carbon-circular_adoption/

 

NEDOは、2019年に経済産業省より示された「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」を受け、電源開発株式会社と中国電力株式会社が出資する大崎クールジェン株式会社とCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)やCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証研究拠点を行ってきた中国電力株式会社大崎発電所内(広島県大崎上島町)にて、2020年7月よりカーボンリサイクル実証研究拠点(実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリアの3つから構成)が整備され、2022年9月に開所した。大崎クールジェン株式会社が分離・回収したCO2をカーボンリサイクル技術の研究に取り組む企業・団体へ供給されている。

 

カーボンリサイクル実証研究拠点(出典NEDO資料)

産業廃棄物由来カルシウムとCO2による炭酸塩製造

出光興産株式会社と日揮ホールディングス株式会社らは、2020年度からのNEDO研究開発委託事業で、廃コンクリートなどの産業廃棄物からカルシウムを抽出し、排ガス中のCO2と反応させて固定化させる技術の開発およびその普及を目指したプロセス実用化に取り組んでいる。炭酸塩化は、製品が従来のフィラー等の用途の他市場規模が大きいコンクリートへの混和等の建材用途が期待できるため、温室効果ガスの排出削減に対して非常に大きなポテンシャルを有しており、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高める加速炭酸塩化技術について試験・評価を進めている。本技術開発を通じて、原料調達から用途開発に至る幅広い領域で、社会実装に向け、積極的に取り組んでいる。

また、出光興産はボイラー排ガス中のCO2をコンクリート廃棄物の高濃度カルシウム廃水と反応させて固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)をアスファルト混和材に使用し、自社の石炭・環境研究所の玄関前に試験舗装(舗装厚4cm、面積500m2)を実施して、検証を行っている。

 

炭酸塩化によるCO2再資源化のイメージ

 

CO2固定化炭酸塩を用いたアスファルト試験舗装
出典:出光興産資料

革新的メタネーション技術開発

大阪ガス株式会社は、CO2と再生可能エネルギーから高いエネルギー変換効率でメタンを合成できる可能性がある革新的なメタネーションにつながる技術であるSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell;固体酸化物形電解セル)の基礎研究に取り組んでおり、実用サイズセルの試作に成功した。SOEC技術はメタン製造用途だけでなく、水素・液体燃料・アンモニア・化学品などの高効率製造にも活用可能と考えられ、2030年に技術確立することを目指している。

 

従来メタネーションと革新的メタネーションの比較
出典:大阪ガスWebサイト