プラスチックのケミカルリサイクル
三菱ケミカルグループ株式会社とENEOS株式会社は、プラスチックのケミカルリサイクル共同事業を進めている。廃プラスチックを油化して製造するリサイクル生成油は両社の既存設備である石油精製装置およびナフサ熱分解装置において原料として使用され、石油製品や各種プラスチックへと再製品化されることで効率的なケミカルリサイクルの循環が実現できる。廃プラスチックの油化技術は、英Mura Technology社の水熱分解技術を導入した。三菱ケミカル茨城事業所に、商業ベースでは国内最大規模となる2万トン/年の処理能力を備えた設備を建設し、2023年度中に完工後、廃プラスチック油化を開始する予定である。今後、廃プラスチックの安定調達、プラスチック製品へのケミカルリサイクル品認証及び石油製品への温室効果ガス削減についての認証取得などによる製品の高付加価値化を図る。
プラスチックリサイクルイメージ
出典:三菱ケミカルグループWebサイト
広島県におけるカーボンリサイクル実証研究の包括的な取組
国では,カーボンリサイクルをカーボンニュートラルの実現に向けたキーテクノロジーの一つとして位置づけ,社会実装に向けた技術開発・実証に取り組んでおり,広島県の大崎上島町において,IGCC※1に燃料電池を組み込んだIGFC※2とCO2分離・回収を組み合わせた革新的低炭素石炭火力発電の実証研究「大崎クールジェンプロジェクト」や,そこで分離・回収したCO2を供給できる国内初の施設として,2022年9月,「カーボンリサイクル実証研究拠点」を整備するなど,取組を加速している。
広島県では,国の取組と一体となり,このカーボンリサイクルを足掛かりに,工場等から排出されるCO22を資源と捉え,CO2が生物や化学品,燃料等,様々なかたちに変化しながら,自然界や産業活動の中で,大気中のCO2を増加させることなく,持続的に循環する社会経済「カーボン・サーキュラー・エコノミー」の実現を目指し,2021年から,全国に先駆け取組を開始した。
2022年3月には,カーボン・サーキュラー・エコノミーの実現に向けて,カーボンリサイクルを核とした新たな産業集積を目指すための方向性や今後3年間の取組を整理した「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想」を策定し,産学官による「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会(通称:CHANCE※3)」を通じたマッチング支援や,県独自の研究・実証支援制度「HIROSHIMA CARBON CIRCULAR PROJECT」による研究資金支援を開始するなど,取組を本格化させている。
※1 Integrated Coal Gasification Combined Cycle
※2 Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle
※3 Council of HiroshimA for a carboN Circular Economy
広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想
広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会
HIROSHIMA CARBON CIRCULAR PROJECT
https://ld.lne.st/2022/09/14/hiroshima-carbon-circular_adoption/
NEDOは、2019年に経済産業省より示された「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」を受け、電源開発株式会社と中国電力株式会社が出資する大崎クールジェン株式会社とCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)やCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証研究拠点を行ってきた中国電力株式会社大崎発電所内(広島県大崎上島町)にて、2020年7月よりカーボンリサイクル実証研究拠点(実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリアの3つから構成)が整備され、2022年9月に開所した。大崎クールジェン株式会社が分離・回収したCO2をカーボンリサイクル技術の研究に取り組む企業・団体へ供給されている。
カーボンリサイクル実証研究拠点(出典NEDO資料)
産業廃棄物由来カルシウムとCO2による炭酸塩製造
出光興産株式会社と日揮ホールディングス株式会社らは、2020年度からのNEDO研究開発委託事業で、廃コンクリートなどの産業廃棄物からカルシウムを抽出し、排ガス中のCO2と反応させて固定化させる技術の開発およびその普及を目指したプロセス実用化に取り組んでいる。炭酸塩化は、製品が従来のフィラー等の用途の他市場規模が大きいコンクリートへの混和等の建材用途が期待できるため、温室効果ガスの排出削減に対して非常に大きなポテンシャルを有しており、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高める加速炭酸塩化技術について試験・評価を進めている。本技術開発を通じて、原料調達から用途開発に至る幅広い領域で、社会実装に向け、積極的に取り組んでいる。
また、出光興産はボイラー排ガス中のCO2をコンクリート廃棄物の高濃度カルシウム廃水と反応させて固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)をアスファルト混和材に使用し、自社の石炭・環境研究所の玄関前に試験舗装(舗装厚4cm、面積500m2)を実施して、検証を行っている。
炭酸塩化によるCO2再資源化のイメージ
CO2固定化炭酸塩を用いたアスファルト試験舗装
出典:出光興産資料
革新的メタネーション技術開発
大阪ガス株式会社は、CO2と再生可能エネルギーから高いエネルギー変換効率でメタンを合成できる可能性がある革新的なメタネーションにつながる技術であるSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell;固体酸化物形電解セル)の基礎研究に取り組んでおり、実用サイズセルの試作に成功した。SOEC技術はメタン製造用途だけでなく、水素・液体燃料・アンモニア・化学品などの高効率製造にも活用可能と考えられ、2030年に技術確立することを目指している。
従来メタネーションと革新的メタネーションの比較
出典:大阪ガスWebサイト
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