紫外光を用いた温室効果ガス(N2O・CH4)分解技術

地球温暖化の原因となる温室効果ガスとして、二酸化炭素(以下CO2)、メタン(以下CH4、一酸化二窒素(以下N2O)、フロンガス等が知られています。CH4の地球温暖化係数はCO2の25倍、N2Oに至ってはCO2の298倍であると報告されており、温暖化に与える影響は大きい。N2OとCH4は、下水処理場や焼却炉、産業排水の処理、畜産排せつ物管理場、農耕地土壌などの現場で放出されています。N2OとCH4の分解方法は現在、高温燃焼や高温触媒方式が知られていますが、高温にする際に大量のCO2を排出してしまうことや触媒時のアンモニア利用による排水処理などが課題となっています。特に排出されるガスはかなり希薄かつガスの捕集が難しく、現状ではその対策が困難な状態です。

これらの課題に対し、ウシオは創業以来培ってきた紫外線技術を応用し、これらの2種類のガスを低濃度にも関わらず、1プロセスで分解・無害化できる技術を開発しました。また、低濃度だけでなく高濃度のガスに対しても有効です。

ウシオのN2Oと CH4の分解方式は「光」や光によって生じる「ラジカル(活性化学種(O(1D),O(3P),OH))」を用いた光化学反応によるものです。この光化学反応の反応初期過程に必要な光波長(340 nm以下)と、ラジカル(O(1D),O(3P),OH)を生成できる光源として、波長172 nmの紫外光を放出できるキセノンエキシマランプ(以下エキシマランプ)があります。エキシマランプは1993年に当社が初めて上市した製品であり、液晶基板の洗浄工程や半導体製造工程に応用展開され、高シェアを誇るランプです。

エキシマランプから生じる紫外線によって、空気中に含まれる酸素(O2)や水分(H2O)が分解され、効率的にラジカルが生成されます。これらの特徴を持つエキシマランプを用いた光化学反応によりppmオーダーの低濃度N2OとCH4を選択的に分解が可能となります。

光による温室効果ガス分解イメージ図

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

N2Oと CH4の「光」と「ラジカル」による反応初期過程

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

例えば下水処理場から排出されるガスに対して本技術を用いると、当社が保有する技術により、N2Oから硝酸を生成でき、さらに硝酸をアンモニアと作用させて硝酸アンモニウム(硝安)を作り、窒素成分の多い肥料として植物の栄養源とすることで植物が育成し、育成された植物を家畜や人間が食し排せつ物として下水処理場へ戻ってくる。即ち、窒素を固定化し、硝酸利用により窒素循環を実現することになります。また、CH4が分解されてできるCO2は水処理工程から排出されるCO2と合わせてCCUS等の技術を用いて炭素循環社会にも資するものです。

なお、本研究は国土交通省の「令和5年度下水道応用研究で実施する研究テーマ」に採択されております。

ウシオは今後も本技術の実用化に向け、更に研究開発を加速し、本技術を様々な排出源への社会実装を通して「地上炭素ネットゼロと、人々の幸せを両立できる世界」に「光」で貢献していきます。

ウシオの目指す循環社会

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

参照URL

https://www.ushio.co.jp/jp/news/1002/2022-2022/500955.html

https://www.ushio.co.jp/jp/news/1002/2023-2023/501054.html

円筒型太陽電池の開発と社会実装

地球温暖化の問題を解決する手段として注目されている太陽電池、その設置場所が課題となっています。森林伐採を通しての設置、傾斜の高い無理のある設置などが挙げらます。

そこで俄かに注目されている設置として、耕作地のソーラシェアリングが注目されています。しかしながら耕作地に通常の太陽電池を農作物の上空に設置すると農作物に必要な日射量を確保できず、農業との両立が難しいとの課題がありました。そこでウシオのガラス封止技術を活かし長寿命化を実現しつつ農作物に必要な日射量を供給することができる円筒型太陽電池を開発。農業と発電の両立に貢献します。

※ウシオが国立大学法人電気通信大学(以下 電通大)と共同開発している円筒型太陽電池が、東京都の令和4年度「大学研究者による事業提案制度」において、「都市型太陽電池による創電・蓄電の強化推進事業」として採択されました。ウシオは、電通大にランプの製造技術を応用したガラス封止技術を提供し、円筒型太陽電池の事業化を支援しています。

 

円筒型太陽電池

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

営農型発電の実証

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

円筒型太陽電池は、発電シートを円筒型のガラスの中に入れ込み、封止した太陽電池です。軽量で運搬やメンテナンスが容易なことから設置する場所や形態を問わず、全方向の光で発電できるため一日の総発電量が平板型の約1.5倍という特長を持っています。円筒型のガラス管が一定の隙間を空けて並べられ、風や光を通すことから、耕作地などに設置して太陽光を分け合う「営農発電」に最適です。軽量化しているため太陽電池を支える支柱の負担も軽減させることができます。

 

 

参照URL

https://www.ushio.co.jp/jp/news/1002/2023-2023/501034.html

CO2局所施肥制御システム「C-BRES(シーブレス)」

新日本空調株式会社は、CO2を的に植物に吸収させるため、CO2局所施肥制御システム「C-BRES」をアースコンシャス株式会社と共同で開発した。従来の方式では栽培ハウス内全体に高濃度なCO2を充満させていたが、「C-BRES」は植物近傍にピンポイント(局所)でCO2を供給すること、さらに、 CO2の噴霧時間制御を実施することで最大90%以上、CO2の使用量削減に成功している。

 

「C-BRES」 検証実験1,2

出典:新日本空調

 

「C-BRES」 概要図

出典:新日本空調

 

「C-BRES」はタッチパネルを搭載した制御盤本体と各種センサ(温度・湿度・CO2濃度・照度)、電磁弁、遠隔用ルーターで構成されている。各種センサで計測した環境データは、制御盤本体に収集され、タッチパネルに表示される。また、インターネットを介して手持ちの端末で確認することもでき、遠隔監視、遠隔制御が可能なシステムである。

「C-BRES」をアンスリウム栽培に適用した場合の生長促進効果について検証した。栽培開始1年後の「CO2施肥なし」と「CO2施肥あり」のアンスリウムの草高を比較すると、「CO2施肥あり」の苗が「CO2施肥なし」よりも草高で14%生長し、CO2局所施肥制御による生長促進効果が確認された。(新日本空調検証実験によるデータ)

 

「C-BRES」 検証実験1,2

出典:新日本空調

 

 

参照URL

https://www.snk.co.jp/csr/topics/detail/?itemid=378&dispmid=1635

【交流会開催】炭素循環で未来を創る! オープンイノベーションのための異分野交流

名古屋産業科学研究所中部TLOとカーボンリサイクルファンドは、炭素循環、環境負荷の低減、持続可能な食糧生産、オープンイノベーションをテーマとして異分野交流会を名古屋市で共同開催しました。各分野のトップランナーが招待講演を行い、大学の産学連携部門からは推薦された研究成果が展示されました。また、スタートアップや企業からの最新技術製品、研究助成プログラム、そして新たなオープンイノベーションプラットフォームの紹介も行われ、参加者数は合計88名、講演および展示は26件にのぼりました。
本イベントの4日前にGX推進法が衆議院本会議で成立したことを受け、中部経済産業局の担当官によるタイムリーな招待講演が行われ、参加者から大変好評を博しました。アンケート調査では、次回も参加したいと回答した方が全体の88.6%に達しました。また、このイベントがきっかけとなり、新たな共同研究がスタートしたり、研究助成の獲得に成功するなど、カーボンリサイクルの実現に向けた具体的な取り組みが始まっています。

 

講演出展者

出典:中部TLO資料

 

イベント会場の様子

出典:中部TLO資料

 

 

参照URL

https://carboncycle.peatix.com/

ダイレクトバイオマス燃料電池の開発

電力中央研究所では、未利用の木質系バイオマスを有効利用するために、小型かつ低コストで高効率な発電が可能なダイレクトバイオマス燃料電池(Direct Biomass Fuel Cells, DBFC)の開発を進めている。DBFC は、ボイラやガス化炉を必要とせず小型化が可能であり、バイオマスを構成する固体炭素と揮発成分の化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換できるため、高効率な発電が期待できる。当所が独自開発したDBFCは円筒形状であり、電池の外側を構成する電極(燃料極)への木質系バイオマス燃料の供給が容易である。バイオマス燃料は700~800℃程度になっている反応容器内に投入され、炭化される。その際に、固体炭素(炭化物)と揮発成分(水素、一酸化炭素などの可燃ガス、二酸化炭素、窒素、水蒸気など)が生成し、これらは共に発電に利用される。また、反応容器内で生成した固体炭素(炭化物)を取り出し、バイオ炭として農地に散布または地中に埋設すれば、植物が吸収したCO2を固定化して環境から隔離することになり、ガーボンネガティブエミッション技術にも繋がる。

 

ダイレクトバイオマス燃料電池(DBFC)の利用形態

出典:電力中央研究所報告 EX22011

収率90%をワンパスで実現するCO2→CO変換技術

積水化学は二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)に高収率で変換するケミカルルーピング型逆シフト反応技術を開発し、
CO2から変換したCOを経由するCCUSプロセスの確立とサステナブルな社会の実現に向けた技術開発を推進している。
CO2からCOに変換する技術として知られている水性ガス逆シフト反応は、平衡反応であることから
CO2からCOへの収率は50%程度であるが、当社は独自開発したケミカルルーピング技術と触媒によりCO収率90%以上を達成した。
更に、貴重な資源である水素を無駄なく活用するため、水素の転化率も75%以上に向上させているとともに、
硫黄系不純物への耐性も評価し、排ガス由来CO2への処理適正の確認も進めている。(図1)

 

図1 ケミカルルーピング技術概要
出典:積水化学工業資料

 

 

本技術の実証は、2021年度からのNEDO委託事業で、アルセロールミタル社と鉄鋼由来排ガスを用いて進めており、
CO収率90%以上、水素転化率75%以上を達成、現在スケールアップを検討している。(図2)

 

図2 アルセロールミタル社との実証内容
出典:積水化学工業WEB(一部加工)

 

鉄鋼プロセス以外にもバイオモノづくり技術への適用を検討しているほか、東海カーボン(株)や
コスモエネルギーホールディングス(株)と協定を締結しCCUSの実現に向けた取組みを進めており、
CO2変換やCO供給需要があるパートナー候補の探索を幅広く進めている。(図3)

 

 

図3 ゴミ焼却場由来CO2を用いる高付加価値化学品合成
出典:積水化学工業WEB(一部加工)

 

参照URL
https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1388996_40075.html
https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1386118_40075.html
https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1386374_40075.html
https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1393845_40075.html

CO2を吸着しガラスの原料へカーボンリサイクル

レブセルでは空気清浄機やエアコンなどの機器類に弊社独自のCO2吸着フィルターを搭載することで、身近な場所からでも二酸化炭素を回収できるDACシステムを提案しています。第1弾として日本エアーテック株式会社様との共同開発で、日本エアーテック社製のHEPAフィルター付空気清浄機に我々のCO2フィルターを搭載することでDAC機能付きの空気清浄機として発売を開始します。我々のフィルターは化学反応で二酸化炭素を吸着固定しガラスの原料に変化する特徴が有る為、将来はCO2を吸着固定した使用済みフィルターからガラス製品を作り、DAC由来のエコなガラス製品として販売できるような仕組みを作りたいと考えています。

 

CO2フィルター

出典:レブセル資料

 

ガラス化に成功

出典:レブセル資料

 

フィルターの搭載先としては、空気清浄機やエアコン、換気扇などの空調機、吸気や排気などのダクト内など様々な場所が考えられます。
また、設置場所としては、店舗、事務所、ホテル、病院、学校、体育館、映画館、工場、その他、自動車や電車などのモビリティーにも可能性が広がると考えています。

 

ガラス製品については、コップやお皿、瓶ガラスなどから始まり、将来は、板ガラスや自動車のガラス、太陽光パネルなどのガラスに利用できればと考えています。
レブセルでは、CO2フィルターの搭載機器、設置場所、レコガラスの製品化など、協業先を募集しています。
レコガラス:リサイクル・エコ・ガラスの略で商標登録済

 

DAC機能付き空気清浄機

出典:レブセル資料

 

 

参照URL
https://www.revcellcarbonoffset.com/

プラスチックのケミカルリサイクル

三菱ケミカルグループ株式会社とENEOS株式会社は、プラスチックのケミカルリサイクル共同事業を進めている。廃プラスチックを油化して製造するリサイクル生成油は両社の既存設備である石油精製装置およびナフサ熱分解装置において原料として使用され、石油製品や各種プラスチックへと再製品化されることで効率的なケミカルリサイクルの循環が実現できる。廃プラスチックの油化技術は、英Mura Technology社の水熱分解技術を導入した。三菱ケミカル茨城事業所に、商業ベースでは国内最大規模となる2万トン/年の処理能力を備えた設備を建設し、2023年度中に完工後、廃プラスチック油化を開始する予定である。今後、廃プラスチックの安定調達、プラスチック製品へのケミカルリサイクル品認証及び石油製品への温室効果ガス削減についての認証取得などによる製品の高付加価値化を図る。

プラスチックリサイクルイメージ

出典:三菱ケミカルグループWebサイト

広島県におけるカーボンリサイクル実証研究の包括的な取組

国では,カーボンリサイクルをカーボンニュートラルの実現に向けたキーテクノロジーの一つとして位置づけ,社会実装に向けた技術開発・実証に取り組んでおり,広島県の大崎上島町において,IGCC※1に燃料電池を組み込んだIGFC※2とCO2分離・回収を組み合わせた革新的低炭素石炭火力発電の実証研究「大崎クールジェンプロジェクト」や,そこで分離・回収したCO2を供給できる国内初の施設として,2022年9月,「カーボンリサイクル実証研究拠点」を整備するなど,取組を加速している。

広島県では,国の取組と一体となり,このカーボンリサイクルを足掛かりに,工場等から排出されるCO22を資源と捉え,CO2が生物や化学品,燃料等,様々なかたちに変化しながら,自然界や産業活動の中で,大気中のCO2を増加させることなく,持続的に循環する社会経済「カーボン・サーキュラー・エコノミー」の実現を目指し,2021年から,全国に先駆け取組を開始した。

2022年3月には,カーボン・サーキュラー・エコノミーの実現に向けて,カーボンリサイクルを核とした新たな産業集積を目指すための方向性や今後3年間の取組を整理した「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想」を策定し,産学官による「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会(通称:CHANCE※3)」を通じたマッチング支援や,県独自の研究・実証支援制度「HIROSHIMA CARBON CIRCULAR PROJECT」による研究資金支援を開始するなど,取組を本格化させている。

※1 Integrated Coal Gasification Combined Cycle

※2 Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle

※3 Council of HiroshimA for a carboN Circular Economy

 

広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想

https://hcce.jp/concept/

 

広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会

https://hcce.jp/

 

HIROSHIMA CARBON CIRCULAR PROJECT

https://ld.lne.st/2022/09/14/hiroshima-carbon-circular_adoption/

 

NEDOは、2019年に経済産業省より示された「カーボンリサイクル3Cイニシアティブ」を受け、電源開発株式会社と中国電力株式会社が出資する大崎クールジェン株式会社とCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)やCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証研究拠点を行ってきた中国電力株式会社大崎発電所内(広島県大崎上島町)にて、2020年7月よりカーボンリサイクル実証研究拠点(実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリアの3つから構成)が整備され、2022年9月に開所した。大崎クールジェン株式会社が分離・回収したCO2をカーボンリサイクル技術の研究に取り組む企業・団体へ供給されている。

 

カーボンリサイクル実証研究拠点(出典NEDO資料)

グリーン水素製造

伊藤忠商事株式会社は、グリーン水素サプライチェーンの構築を目指す中、水素生産・貯蔵・配給に関連する技術を世界中の各産業界に提供しているNel ASA(ノルウェー)と水素分野における戦略的業務協力に関する覚書を締結し、両社で水素関連ビジネスを推進することに合意した(2021年10月)。Nel ASA社はグリーン水素生産に欠かせない水電解装置に関して、生産能力・装置規模・販売台数・売上高ともに世界最大規模のメーカー。また同社は2021年には水電解装置メーカーとして初めてとなる20MW級装置の受注を公表。水電解において現在実用化された主要な手法はアルカリ型とPEM型(固体高分子型)の二種類であり、Nel社は両タイプとも生産することができる世界でも数少ない企業でもある。

加えて伊藤忠商事は、2021年、Dalrymple Bay Infrastructure Limited(豪州)、North Queensland Bulk Ports Corporation Limited(豪州)、Brookfield Asset Management Inc.(カナダ)との4社間にて、豪州におけるグリーン水素製造及び貯蔵、豪州からのグリーン水素の輸出を含めたサプライチェーン構築に関する事業化調査を共同実施することに合意し、第1段階の事業化調査を開始しており、商業生産に向けて段階的に調査を実施予定である。

 

Nel社製水電解装置(アルカリ型)

 

Nel社製水電解装置(PEM型)
出典:伊藤忠商事Webサイト