Carbon recycling worldカーボンリサイクルワールド

植物工場とは

1.植物工場の定義

閉鎖的または半閉鎖的な空間内において、栽培の全部もしくは一部に機器を利用して、植物生育環境(光、温度、湿度、CO2濃度など)を高度に制御・モニタリングし、計画的な植物の栽培を可能とする施設です。

 

2.植物工場の特徴

植物工場には光の供給方法(人工光型/太陽光利用型)によって大きく2つの種類があります。

 

.CO2の施肥効果

密閉空間では、植物の成長によりCO2が不足するため、換気もしくは外部からCO2を注入する必要があります。そこで、CO2濃度を一定濃度上昇させると、植物がよりCO2を吸収し光合成が促進され、生育や収量を増大させる肥料のような効果があります。その効果を「CO2の施肥効果」といいます。CO2濃度をコントロールすることにより、成長を早めるだけでなく、品質も向上することができます。

通常、大気中のCO2濃度は、通常360ppmですが、2~3倍にあたる700~1,000ppm程度に高めると、光合成速度が1.5~2倍となり、植物の収量が20~30%程度高まることが分かっています1)。例えば、カゴメ株式会社の山梨県北杜市の植物工場では、トマトを栽培するのにCO2濃度を大気中の濃度の5倍にする2)など、環境や種類によって最適なCO2濃度を管理しています。

 

4.植物工場におけるCO2の供給方法

CO2の供給方法は、燃焼排ガスを供給する方法とCO2ガスを供給する方法があります。

燃焼排ガスを利用する方法の一つに、トリジェネレーションがあります。燃料から発電し、排熱を回収するコージェネレーションだけでなく、そこから発生するCO2も有効活用する方法です。

国内初の本格的トリジェネレーションシステムを導入した植物工場は、北海道苫小牧市にあります。株式会社J ファーム(JFEエンジニアリングと農業生産法人株式会社アド・ワン・ファームによる共同出資)が、2014年よりベビーリーフや高糖度ミニトマトを生産しています。ここでは、ガスエンジンから発電し、排熱を温室に供給するだけでなく、排ガスから成長を阻害する有害物質を取り除き、CO2を生育に最適な濃度に調整しています。

 

今後、植物工場の大規模化に伴い、発電所や工場から回収したCO2を近隣の植物工場にパイプライン等で供給することも可能となります。

 

5.国内事例

日本では、2020年2月時点で人工光型187か所、太陽光型164か所、太陽光人工光併用型35か所設置されています3)。  ※施設面積が概ね1ha以上で溶液栽培装置を有する施設

三菱ガス化学株式会社は、国内最大規模となる完全人工光型植物工場を、同社・事業所である「QOLイノベーションセンター白河」(福島県)内に建設し、2019年11月22日に竣工しました。施設規模はリーフレタス換算(80g/1株)にて1日、3.2万株と国内最大級の施設となります。4)

また、九州電力株式会社では、2019年9月25日豊前発電所遊休地(福岡県)にレタスの生産能力日産5tと世界最大級の人工光型植物工場の事業化に向けた検討を開始することを発表しました。5)

このように自社工場の敷地や遊休施設を活用するなどして、従来の農業従事者だけでなく、多様な企業が参入する例も増えています。

 

6.海外事例

農業先進国であるオランダでは太陽光型植物工場が中心です。国内6か所に生産者、研究機関、関連企業など農業に関する産業が集約したグリーンポートと呼ばれる地域を設置し、産学官の連携を図っています。そこでは栽培環境や植物の生育状態だけでなく、生産コスト、出荷、販売、経営指標もPC等でモニターし情報を管理しています。

 

また、天然ガスを利用した大型発電設備を併設している植物工場が多く、トリジェネレーションの導入も早くから進められてきました。OCAP社は、ロッテルダム近郊のロイヤル・ダッチ・シェルの製油所にて精製工程で排出されるCO2を購入して、不要になった原油輸送用のパイプラインを利用し、600以上農家に供給販売しています。これにより、天然ガス使用の削減と熱が不要となる夏季でも安定的なCO2供給が可能となりました。

 

参考文献

1) Dr.Elly Nederhoff 1986

2) 日本経済新聞 2019年10月27日CO2を生かす(8)

3) 一般社団法人日本施設園芸協会 令和2年3月大規模施設園芸・植物工場実態調査・事例調査

4) 三菱ガス化学株式会社 2019年11月22日 ニュースリリース 国内最大規模の完全人工光型植物工場の竣工について

5) 九州電力株式会社 2019年9月25日 プレスリリース 世界最大級の植物工場の事業化検討を開始します

 

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