Carbon recycling worldカーボンリサイクルワールド

触媒とは

1.触媒の定義

触媒の定義は「化学反応においてそのもの自身は変化しないが、反応速度を変化させる物質」とされており、図に示すように化学反応時の分子の結合を切断するエネルギーを小さくします。この作用により、目的となる製品を作る際の化学反応の効率を高めることが可能となります。

 

2.革新的な触媒技術

触媒技術の進歩により、化学品、医薬品等が普及し、人類の生活が大きく変わった事例を紹介します。

(1)プラスチック製品の普及

ドイツのチーグラーとイタリアのナッタにより、従来高圧条件(2,000気圧)で合成していたポリエチレンやポリプロピレンを低圧(10気圧程度)で生成可能な触媒が開発されました。この開発は、ポリ袋や容器などのプラスチック製品の普及に貢献し、1963年にノーベル化学賞を受賞しました。

(2)香料や医薬品の普及

従来、同一原子数で性質の異なる鏡写し立体構造を持つ物質(鏡像異性体)の作り分けは極めて困難でした。そこで、野依良治教授らにより見出され、目的物質合成時に目的の立体構造に作り分ける触媒開発に成功しました。これは、香料のメントールの人工合成や医薬品の合成手法として実用化され、2001年ノーベル化学賞を受賞しました。

(3)液化燃料の製造

ドイツのフィッシャーとトロプシュは、一酸化炭素と水素の合成ガスから液化燃料(e-fuel)を生成する触媒を開発しました。合成ガスは、石炭、天然ガス、重質油、バイオマスなどから作ることができます。そのため、石油資源が乏しい国でも液化燃料を製造することができ、南アフリカでは石炭からe-fuelを製造し自国で使用しています。また、富山大学椿教授らは、近年触媒の貴金属量を大幅削減可能な触媒を開発し、バイオマスを原料としてジェット燃料製造の検証を実施しています。

 

このように、触媒の開発は、我々の生活に大きく影響を与えてきました。カーボンリサイクルに関わる技術についても、CO2から燃料や化学原料を合成する触媒開発が進められており、今後の社会実装の鍵として大変期待されています。

 

参考資料:触媒技術関係の主なノーベル賞 受賞者

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