Carbon Recycling News カーボンリサイクルニュース

お知らせ 【旬なニュースを解説!】日中、CO2・水素の再利用で連携

中国・陝西省の楡林地区は、鉱物資源が豊かで、石炭化学産業が盛んな地域の一つです。ここでは、石炭から化学品を生産する過程で副生物として水素が得られます。日本の技術を活用し、得られた水素とCO2からメタンを製造する事業化に向けて、今般、日本と中国が協力覚書を交わしました。本プロジェクトには、カーボンリサイクルファンド会員である日立造船と石炭エネルギーセンターが参加しています。今後、基礎調査や技術実証を経て2020年度半ばの事業化を目指します。

現地では、触媒技術に強みを持つ日立造船が400Nm3/h世界最大規模のメタン製造施設の建設を検討します。メタンは都市ガス代替として需要があり、工業団地の需要の約3割に及ぶ規模になります。

 

ここで日立造船のメタン製造技術について解説します。水素とCO2からメタンを合成する技術をメタネーションといいます。

メタネーションは発熱反応です。また、触媒を介することにより外部のエネルギーを必要とせずに自発的に反応が進行します。1993年東北大学金属材料研究所の橋本功二(現東北大学・東北工業大学名誉教授)らは、触媒に貴金属を使わず、迅速にメタンに転換するニッケル-ジルコニウム合金触媒を見出しました。その後、1995年橋本教授らと日立造船は、0.1Nm3/hのメタン生成実証システムを作製し、世界初のメタネーションシステムを稼働させました[1]。現在も、将来のメタン合成能力の大型化を目指して、プレート型反応器を採用した試験を実施するなど、メタネーション技術の確立を目指しています[2]

このように日本の先進的なメタネーション技術と中国との連携により、中国におけるCO2の削減や資源化、ガス資源の海外依存度の低減へ貢献することが可能となります。また、メタネーションの事業化には安価な水素調達も重要です。本プロジェクトのように副生物として水素が多く発生する化学産業や製鉄分野での活用が期待されます。

 

2020年12月20日 日本経済新聞 朝刊記事 「日中、CO2・水素の再利用で連携」

 

参考文献

[1]一般社団法人エネルギー・資源学会 エネルギー・資源 2020年11月号

[2]NEDOニュースリリースCO2を有効利用するメタン合成試験設備を完成、本格稼働に向けて試運転開始 2019年10月16日

一覧に戻る