【交流会開催】炭素循環で未来を創る! オープンイノベーションのための異分野交流

名古屋産業科学研究所中部TLOとカーボンリサイクルファンドは、炭素循環、環境負荷の低減、持続可能な食糧生産、オープンイノベーションをテーマとして異分野交流会を名古屋市で共同開催しました。各分野のトップランナーが招待講演を行い、大学の産学連携部門からは推薦された研究成果が展示されました。また、スタートアップや企業からの最新技術製品、研究助成プログラム、そして新たなオープンイノベーションプラットフォームの紹介も行われ、参加者数は合計88名、講演および展示は26件にのぼりました。
本イベントの4日前にGX推進法が衆議院本会議で成立したことを受け、中部経済産業局の担当官によるタイムリーな招待講演が行われ、参加者から大変好評を博しました。アンケート調査では、次回も参加したいと回答した方が全体の88.6%に達しました。また、このイベントがきっかけとなり、新たな共同研究がスタートしたり、研究助成の獲得に成功するなど、カーボンリサイクルの実現に向けた具体的な取り組みが始まっています。

 

講演出展者

出典:中部TLO資料

 

イベント会場の様子

出典:中部TLO資料

 

 

参照URL

https://carboncycle.peatix.com/

ダイレクトバイオマス燃料電池の開発

電力中央研究所では、未利用の木質系バイオマスを有効利用するために、小型かつ低コストで高効率な発電が可能なダイレクトバイオマス燃料電池(Direct Biomass Fuel Cells, DBFC)の開発を進めている。DBFC は、ボイラやガス化炉を必要とせず小型化が可能であり、バイオマスを構成する固体炭素と揮発成分の化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換できるため、高効率な発電が期待できる。当所が独自開発したDBFCは円筒形状であり、電池の外側を構成する電極(燃料極)への木質系バイオマス燃料の供給が容易である。バイオマス燃料は700~800℃程度になっている反応容器内に投入され、炭化される。その際に、固体炭素(炭化物)と揮発成分(水素、一酸化炭素などの可燃ガス、二酸化炭素、窒素、水蒸気など)が生成し、これらは共に発電に利用される。また、反応容器内で生成した固体炭素(炭化物)を取り出し、バイオ炭として農地に散布または地中に埋設すれば、植物が吸収したCO2を固定化して環境から隔離することになり、ガーボンネガティブエミッション技術にも繋がる。

 

ダイレクトバイオマス燃料電池(DBFC)の利用形態

出典:電力中央研究所報告 EX22011

微生物燃料電池を利用した二酸化炭素ガス回収・固定化技術

新日本空調株式会社は2021年より国立大学法人東北大学(総長 大野英男)大学院工学研究科の佐野大輔教授とともに二酸化炭素の回収・固定化技術の実用化研究を進めている。
本研究では、アルカリ性溶液に二酸化炭素を化学反応で吸収させる化学吸収法において、微生物燃料電池(Microbial fuel cells:MFC)を用い、独自の手法でアルカリ性溶液を生成している。MFCとは、微生物の代謝能力を利用して有機物などを電気エネルギーに変換する装置である。これまでMFCは、下水や汚水などに含まれる有機物を供給することで、有機物の酸化分解(水処理)を行いつつ、発電を行なうことを主な目的として研究開発が進められてきた。

 

空気カソード式MFCによる大気中二酸化炭素固定の模式図

出典: 新日本空調

 

東北大学での実験状況

出典: 東北大学

 

新日本空調と佐野教授らのグループは、エアカソード型と呼ばれる、大気中の酸素を直接利用する方式のMFCを運転する過程で、アルカリ性溶液が生成されることに着目し、ここに二酸化炭素を反応させることで、二酸化炭素ガスを化合物(炭酸塩)として回収・固定化する手法を考案した。この手法によって、①有機物の酸化分解(水処理)、②発電、③二酸化炭素回収・固定化の3つの効果が期待できる。

 

また、本研究は2022年に一般社団法人カーボンリサイクルファンドからの研究助成を受けている。この研究助成を活用し、 2023年6月から実際の汚水処理設備で有機物をMFCに供給し、連続運転を行い、その運転データを取得する検証試験を実施した。

 

参照URL
https://www.snk.co.jp/news_info/news/?itemid=452&dispmid=892&TabModule1201=1