バイオ炭コンクリートの開発と場内施設への適用

清水建設株式会社は、農地施用において炭素貯留として国のJ-クレジット制度の対象として認められている「バイオ炭」をコンクリートに混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート(以下、SUSMICS-C)を開発した。SUSMICS-Cは、成長過程で大気中のCO2を吸収した木材の炭化物であるバイオ炭を利用し、コンクリート内部にCO2を固定するもので、製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を高炉スラグで代替した低炭素セメントを併用することで、カーボンネガティブを実現できる。

バイオ炭の材料には、針葉樹や広葉樹の製材時に廃棄されるオガ粉を利用。オガ粉を炭化したオガ炭は、他のバイオ炭と比べて炭素を安定的かつ多量に固定できる特徴があり、炭素含有率は約9割、100年後の炭素残存率も約9割に上る。バイオ炭1kgあたりのCO2固定量は約2.3kgであり、コンクリート1m3あたり80kgのバイオ炭を添加することで、約183kgのCO2を固定できる。セメント材料に低炭素型の高炉セメント類を使用すれば、普通コンクリートのCO2排出量と比べて最大118%のCO2削減効果が得られる。SUSMICS-Cは、環境性能のみならず施工性にも優れ、現場でのポンプ圧送も可能で、強度についても普通コンクリートと同等であるため,コンクリート二次製品への適用のみならず、現場でのコンクリート施工にも広く対応できる。

今回、SUSMICS-Cを清水建設の場内工事用道路の仮舗装に実工事として初適用し、実証を行った。セメント材料に高炉セメントB種を使用し、コンクリート1m3あたり60kg/m3のバイオ炭を混入する配合を採用し、普通コンクリート比99%のCO2排出削減効果を実現した。施工数量は34.5m3であり、定量的なCO2削減量は約6.7トンである。普通コンクリートと同様に施工できること、試験体から採取したSUSMICS-Cのコア供試体の圧縮強度が設計基準強度を十分に満足する性能を保持していることを確認した。

今後、脱炭素社会の実現に向けて、SUSMICS-Cの適用範囲を拡大し、仮設構造物のみならず本設コンクリート構造物への適用を進める。併せて、J-クレジット制度での認証など、SUSMICS-Cの環境価値向上に向けた取組を進める。

 

粉状および粒状のバイオ炭
出典:清水建設Webサイト

 

 

実工事への適用
出典:清水建設Webサイト

 

参照URL
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2022070.html

 

CO2局所施肥制御システム「C-BRES(シーブレス)」

新日本空調株式会社は、CO2を的に植物に吸収させるため、CO2局所施肥制御システム「C-BRES」をアースコンシャス株式会社と共同で開発した。従来の方式では栽培ハウス内全体に高濃度なCO2を充満させていたが、「C-BRES」は植物近傍にピンポイント(局所)でCO2を供給すること、さらに、 CO2の噴霧時間制御を実施することで最大90%以上、CO2の使用量削減に成功している。

 

「C-BRES」 検証実験1,2

出典:新日本空調

 

「C-BRES」 概要図

出典:新日本空調

 

「C-BRES」はタッチパネルを搭載した制御盤本体と各種センサ(温度・湿度・CO2濃度・照度)、電磁弁、遠隔用ルーターで構成されている。各種センサで計測した環境データは、制御盤本体に収集され、タッチパネルに表示される。また、インターネットを介して手持ちの端末で確認することもでき、遠隔監視、遠隔制御が可能なシステムである。

「C-BRES」をアンスリウム栽培に適用した場合の生長促進効果について検証した。栽培開始1年後の「CO2施肥なし」と「CO2施肥あり」のアンスリウムの草高を比較すると、「CO2施肥あり」の苗が「CO2施肥なし」よりも草高で14%生長し、CO2局所施肥制御による生長促進効果が確認された。(新日本空調検証実験によるデータ)

 

「C-BRES」 検証実験1,2

出典:新日本空調

 

 

参照URL

https://www.snk.co.jp/csr/topics/detail/?itemid=378&dispmid=1635

港湾構造物に海藻を繁茂させCO2吸収源とする技術開発

東亜建設工業株式会社は、港湾・沿岸域におけるブルーカーボン生態系を拡大させる技術の一つとして、直立の護岸等の港湾構造物への海藻着生に関する技術検討に取り組んでいる。検討では、関東地方整備局の実海域実験場提供システムを活用し、横浜港南本牧ふ頭の護岸に海藻の着生・生育を促す角部を有する突起形状の着生基盤を設置し、モニタリングを行っている。設置約1年後には、着生基盤の上面や角部を起点として、アオサ属等の緑藻類の着生が確認されている。このことから、角部を有する着生基盤を設置し、形状変化を与えることにより、海藻の着生を促し、CO2吸収源となるブルーカーボン生態系の形成につながることがわかった。今後、多様な海藻がより効果的に着生・生育しやすい形状や方策を検討し、技術確立することを目指していく。

 

スリット式ケーソン護岸と着生基盤のイメージ

出典:東亜建設工業Webサイト

 

 設置約1年後の着生基盤の海藻着生状況

出典:東亜建設工業Webサイト

微生物燃料電池を利用した二酸化炭素ガス回収・固定化技術

新日本空調株式会社は2021年より国立大学法人東北大学(総長 大野英男)大学院工学研究科の佐野大輔教授とともに二酸化炭素の回収・固定化技術の実用化研究を進めている。
本研究では、アルカリ性溶液に二酸化炭素を化学反応で吸収させる化学吸収法において、微生物燃料電池(Microbial fuel cells:MFC)を用い、独自の手法でアルカリ性溶液を生成している。MFCとは、微生物の代謝能力を利用して有機物などを電気エネルギーに変換する装置である。これまでMFCは、下水や汚水などに含まれる有機物を供給することで、有機物の酸化分解(水処理)を行いつつ、発電を行なうことを主な目的として研究開発が進められてきた。

 

空気カソード式MFCによる大気中二酸化炭素固定の模式図

出典: 新日本空調

 

東北大学での実験状況

出典: 東北大学

 

新日本空調と佐野教授らのグループは、エアカソード型と呼ばれる、大気中の酸素を直接利用する方式のMFCを運転する過程で、アルカリ性溶液が生成されることに着目し、ここに二酸化炭素を反応させることで、二酸化炭素ガスを化合物(炭酸塩)として回収・固定化する手法を考案した。この手法によって、①有機物の酸化分解(水処理)、②発電、③二酸化炭素回収・固定化の3つの効果が期待できる。

 

また、本研究は2022年に一般社団法人カーボンリサイクルファンドからの研究助成を受けている。この研究助成を活用し、 2023年6月から実際の汚水処理設備で有機物をMFCに供給し、連続運転を行い、その運転データを取得する検証試験を実施した。

 

参照URL
https://www.snk.co.jp/news_info/news/?itemid=452&dispmid=892&TabModule1201=1

CO2を固定化する環境配慮型コンクリートの開発

「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」は、「CO2-Storage and Utilization for Infrastructure by COncrete Materials」の略称で、鹿島建設株式会社がデンカ株式会社、中国電力株式会社、ランデス株式会社とともに開発したコンクリートの固化過程でCO2を固定する技術である。コンクリート中のセメントの半分以上を化学工場にて発生する副産物(副生消石灰)を原料としCO2と反応・吸収し硬化する性質を持つ特殊な混和材(γ-C2S)や産業副産物などに置き換えることで、セメント製造時に排出されるCO2を大幅に削減する。

このコンクリートを高濃度のCO2と接触(炭酸化養生)させることにより、大量のCO2を吸収させることを可能にした。供給するCO2として火力発電所の排気ガス中のCO2を利用する技術も確立しており、産業副産物の有効利用と、コンクリートへのCO2の大量固定により、CO2排出量ゼロ以下を世界で初めて実現した。

 

CO2-SUICOMの概要

出典:鹿島建設Webサイト

CO2-SUICOMのCO2吸収・固定量

出典:鹿島建設Webサイト

 

配合の調整を通じたCO2吸収量レベルの違いに応じ、既に商品としてメニュー化しているが、現在、さらなるCO2吸収性能の向上や多様なメニュー化を通じた技術のさらなる普及に向け、関係機関と共同で炭酸化養生に必要となるCO2のバリューチェーンの多様化をはじめとして、材料、施工法、品質保証方法の標準化などに取り組んでいる。

CO2-SUICOMのグレードとCO2固定量の目安

出典:鹿島建設Webサイト

 

 

参照URL

https://www.kajima.co.jp/tech/c_sus_con/index.html