FT合成によるCO2を活用した液体燃料合成技術の開発

住友重機械工業株式会社は、CO2活用技術としてミネラル化技術*、藻類培養技術、ダイヤモンド電極によるCO2の電気化学的還元、カーボンリサイクル液体燃料技術などの開発を進めている。カーボンリサイクル液体燃料技術については、CO2を炭素源とするフィッシャー・トロプシュ(FT)合成**で灯油、ジェット燃料、軽油相当の中間留分に変換することにより、現在流通している移動体燃料と組み合わせるなどエンドユーザーの負担を抑制出来る可能性がある。

反応特性を改善する助触媒を添加したFT触媒を用いることによりCO2-CO-H2フィードにおいて常圧でも液状炭化水素およびワックス分が生成されることを確認。CO2を含むフィードを用いるスラリー床反応形式FT合成の検討を進めており、2025年に50L規模ベンチ試験を開始すべく、技術開発を進めている。

 

FT燃料合成プロセス
出典:住友重機械工業資料

 

合成燃料の特徴
出典:住友重機械工業資料

 

*バイオマス灰から抽出したカルシウム分にCO2を吹込みCaCO3として固定する技術
**COと水素から触媒反応で石油代替となる液体高水素を合成する反応プロセス

 

 

参照URL

二酸化炭素を20%混合した合成ガスからのFT合成燃料生成に成功

https://www.shi.co.jp/info/2023/6kgpsq000000mrde.html

CCUSバリューチェーンのデジタルプラットフォーム

三菱重工業株式会社は、日本アイ・ビー・エム株式会社と共同で、CCUSバリューチェーンのデジタルプラットフォーム「CO2NNEX」を開発中である。CO2NNEXは、CO2回収、輸送、利活用や貯留を含むCCUSのバリューチェーンを、実測のCO2データと、関わるプレーヤー間の取引をIoT・ブロックチェーンでつなぐもの。CCUSバリューチェーンをデジタル化し、可視化と価値の追跡を可能にし、将来的にはCO2や環境価値の取引そして全体最適を可能とする事を目論む。CO2NNEXを通じた、CO2エコシステム構築の加速と活性化により、2050カーボンニュートラルへの貢献を目指す。

 

CCUSデジタルプラットフォームのイメージ
出典:三菱重工Webサイト

 

 

2022年中にプラットフォームの基盤が完成。現在それを元に国内外の様々なCCS/CCUプロジェクトのステークホルダーと共にデジタル実証を計画又は開始している。CO2NNEXに集まるCCUSのデータを利用することで、様々なサービスプロバイダがそれぞれの価値提供が行えるようにオープンなプラットフォームを構築していきたい。

 

CCUSバリューチェーン全体像
出典:三菱重工Webサイト

 

そうまIHIグリーンエネルギーセンター

IHIは東日本大震災の復興から地域経済再生のための新しい街づくりを目指して,福島県相馬市と連携し、スマートコミュニティ事業拠点「そうまIHIグリーンエネルギーセンター(以下、「SIGC」)」を2018年4月から運営している。下図に示すようにSIGCは太陽光発電による再生可能エネルギーをエリア内で地産地消し、さらに、防災機能の充実、地域活性化を目指すことをコンセプトとしている。

 

スマートコミュニティモデル
出典:IHI資料

 

2020年9月、SIGCで生産・貯蔵されたカーボンフリー水素を技術実証に活用する水素研究棟「そうまラボ」を同センター内に新設された。そうまラボでは、カーボンフリー水素などを使用し、メタンやアンモニア、オレフィンなどを合成する「Power to X」技術を検証することを想定している。そうまラボに設置したメタンを合成する試験装置は、水電解で得た水素とCO2を原料にして12Nm3/hのメタンを合成できる。

 

 

そうまラボ(左)と同所に設置された12.5Nm3/h規模のメタネーション設備(右)
出典:IHI資料

 

政府が宣言している2050年までのカーボンニュートラル化を達成するためには、地域再エネの有効活用とカーボンフリー水素のバリューチェーン構築が重要な役割を担うと考える。SIGCで培った地産地消エネルギーマネジメント技術とPower to X技術は、それらに欠かせないキーテクノロジーであるため、IHIはスマートコミュニティモデルの普及・拡張に取り組んでいる。

 

【参照URL】

https://www.ihi.co.jp/ihiing/decarbonization/20220509-01.html