CO2を原料とした次世代LIMEXの開発

LIMEXは、炭酸カルシウムなどの無機物を50%以上含む、無機フィラー分散系の複合素材です。これまでは、豊富で枯渇リスクの少ない石灰石由来の炭酸カルシウムを使うことで、石油由来のプラスチックの使用量やライフサイクル全体でCO2排出量を減らせるプラスチックの代替素材として、また、水の消費量を減らせる紙の代替素材として、既に10,000以上(事業所数含む)の企業や自治体等に採用されています。

次世代LIMEXは、従来のLIMEXで使用されていた鉱物由来の炭酸カルシウムを、排ガス由来の CO2と、コンクリートスラッジや鉄鋼スラグなど工場から排出されるカルシウム含有廃棄物から、低環境負荷のプロセスで化学合成した炭酸カルシウムに置き換えることで、カーボンニュートラルへの貢献を推進する低炭素素材です。

カーボンリサイクル技術を使って大気や排ガス由来のCO2を吸収・固定して作る炭酸カルシウムを主原料にすることで、プラスチック代替品を製造する際、従来の石油由来のプラスチック製品と比較して、石油由来プラスチックの使用量や、ライフサイクル全体でのCO2排出量を減らすことが可能です。さらに、CO2を固定したまま、繰り返しリサイクルすることが可能です。なお、カルシウム含有廃棄物を素材の原料に使用することで、再生利用による資源の有効活用にも寄与します。

次世代LIMEX

出典:TBMウェブページ

 

次世代LIMEXの製造プロセス

出典:TBMウェブページ

 

カーボンリサイクルで作る炭酸カルシウムの用途は、従来はセメントや骨材が主に考えられていました。次世代LIMEXは、産業用フィルムや食品パッケージ、ラベル基材など、産業資材から身近な消費財まで、付加価値が高い様々な用途に使用することが可能です。

今後TBMは、今回発表した次世代LIMEXの量産を目指すと同時に、副原料である樹脂部分を従来の石油由来のものではなく、植物由来の樹脂やリサイクル樹脂を使うことで、さらに環境負荷を低減し、将来的にはカーボンネガティブな素材の開発を推進していきます。

 

幅広い次世代LIMEXの用途

出典:TBMウェブページ

 

参照URL 

https://tb-m.com/business/limex2-0/

 

陸域CCS/CCUSと組み合わせた国内ブルー水素製造事業

北海道三笠市では、未利用資源である石炭の地下ガス化や、木質バイオマスと露頭石炭の混合によるガス化により、水素を製造する事業に取り組んでいる。水素製造過程で発生するCO2は、かつての石炭採掘跡に圧入し貯留・鉱物化させるCCS/CCUSにより、CO2排出量実質ゼロを目指す。

石炭・木質バイオマスガス化イメージ

出典:三笠市HP

 

CO2固定イメージ

出典:三笠市HP

 

明治時代から石炭産業により発展した三笠市の地下には、多くの未採掘の石炭と、石炭の採掘跡が現存している。石炭はCO2を吸着する性質がある上、採掘跡の空洞は地圧によって潰れながらも空隙が多数存在する。これら地域の特性を活かして、CO2及びCO2と反応して固化するスラリーを圧入することで、CO2削減に加え、地盤の安定化に寄与する陸域CCS/CCUSを目指している。

三笠市では、これらのブルー水素製造を目指す取組みをH-UCG(ハイブリッド石炭地下ガス化)事業と称し、市の4大プロジェクトの一つに位置付けている。H-UCG事業が実用化されれば、「陸域CCS/CCUSと組み合わせた国内ブルー水素製造の地域モデル」として国内外の産炭地に技術展開を図りたい。また、H-UCG事業と他の4大プロジェクト(三笠ジオパーク、三笠高校・高校生レストラン、農業振興)とを相互に連携させ、新たな産業・雇用の創出とゼロカーボンシティの実現の両立を目指す。

三笠市ゼロカーボンシティ構想2050

出典:三笠市資料

 

 

なお本事業は「三笠市 H-UCG によるブルー水素サプライチェーン構築実証事業」として、2023年11月、NEDOの「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に採択され、令和7年度までの実証を目指す。

 

参照URL

https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/hotnews/detail/00014328.html

CO2を効率よくフレッシュコンクリートに固定化するシステムの開発に成功

太平洋セメント株式会社は、フレッシュコンクリートに、CO2を効率よく固定化するシステム「カーボキャッチ®」を開発した。「カーボキャッチ®」は、 CO2を満たした密閉容器内にセメントと水との混合物であるセメントスラリーを循環させることにより、効率よく CO2を固定化することを可能にした当社独自のシステムで、セメントスラリーに供給した CO2の 90%以上(セメントスラリー中のセメント 1トン当たり 330 ㎏以上)を固体状の微細な炭酸カルシウムとして効率よく固定化できる。

「カーボキャッチ®」は、NEDOの助成事業「炭素循環型セメント製造プロセス技術開発(2020~2021 年度)」で得られた知見をベースに、回収された CO2をセメント・コンクリ-ト系材料に固定化させるカーボンリサイクル技術開発 の一環として確立した。 カーボキャッチ®・スラリーを用いて製造した消波ブロックは、コンクリート 1m3当たり 約 8.0kg(23kg/t-cem*)の CO2を固定化しており、これは NEDO が目標とした 10 ㎏/t-cemを上回る結果。カーボキャッチ®・スラリー(図参照)を使用した場合においても、従来のコンクリートと同等以上のフレッシュ性状、強度発現性・耐久性、ブリーディング量の抑制、凝結時間の短縮等 の特長を得られることを確認した。

「カーボキャッチ®」の実用化へ向けて、プレキャストコンクリート製品を対象とした実機製造試験を関連会社で行うとともに、舗装用コンクリートとしての 適用性を評価するため同社熊谷工場で試験施工を実施した。いずれも従来のコンクリートと同等以上の品質であることが確認され、本システムが汎用的なコンクリート製造に適用可能 な CCU 技術であることが示された。

「カーボキャッチ®」は様々な用途にも適用できる可能性があり、現在、あらゆる分野への 展開を視野に入れた研究開発を進めている。

 

左;カーボキャッチ®のシステム      右;カーボキャッチ®・スラリーを用いたコンクリート配合の概念図

出典:太平洋セメントWebサイト

 

左;カーボキャッチ®・スラリーを用いて製造した消波ブロック

左中;カーボキャッチ®・スラリーを用いて製造したプレキャストコンクリート製品(ガードレール用連続基礎ブロック)

右中・右;カーボキャッチ®・スラリーを使用した舗装コンクリートの試験施工

出典:太平洋セメント資料

 

*コンクリート製造時にはカーボキャッチ®・スラリーだけでなくセメントを使用するため、原単位が変化する

 

 

参照URL

https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/230315_1.pdf

オンサイトでの「CO2資源化サービス」を開始

東京ガス株式会社は、都市ガス機器利用時の排気に含まれる二酸化炭素(CO2)と水酸化物を反応させ、様々な用途で利用可能な炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム等)をお客さま先(オンサイト)で製造する「CO2資源化サービス」(以下、本サービス)を2023年10月より開始した。

本サービスは製品の製造プロセスで炭酸塩をオンサイト利用する工場等の産業用のお客さまを中心に展開していく。加えて、オフィスビルや商業施設等、炭酸塩のオンサイト利用が難しいお客さまに向けても本サービスを展開していくことを目指し、炭酸塩を洗剤や肥料等の製品の原料として利用する等、炭酸塩の利用用途を拡大する取り組みも進める。

 

本サービスのカーボンリサイクルのイメージ

出典:東京ガスプレスリリース

 

今回、ヱスケー石鹸株式会社と共同で、ガス機器排気中のCO2を吸収した炭酸塩(炭酸カリウム)を活用した「CO2リサイクル洗濯用液体せっけん」を開発した。また、ガス機器排気中のCO2を吸収した炭酸塩(炭酸水素カリウム)が肥料として効能があることを評価・確認し、東京ガス独自で「エコカリウム®」という名称で農林水産大臣による普通肥料の登録を受けている。

このようなCO2リサイクル製品がCO2を排出した地域(まち、工場等)の中で利活用される「地域におけるカーボンリサイクル」も視野に、今後、お客さまと共に、CO2リサイクル製品の利用モデル構築を目指していく。

 

液体洗剤パッケージイメージ

出典:東京ガスプレスリリース

 

小松菜の栽培試験による肥料の効能検証

出典:東京ガスプレスリリース

 

参照URL

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20231025-01.pdf

マイクロ波によるCO2吸収焼結体(CO2-TriCOM)の開発

廃棄物にCO2を「取り込む」ことで新たな製品として生まれ変わらせる画期的なカーボンリサイクル技術です。

NEDO※が実施する「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発」の委託事業として、2020年7月から国立大学法人広島大学、中国高圧コンクリート工業株式会社(再委託先:中部大学)と共同で実施しています。

混合した材料にマイクロ波を照射することで,粉状の材料が溶融焼結します。CO2をその過程で吸収し,焼結体に固定化します。

※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

 

 

参照URL

・プレスリリース 石炭火力発電分野のカーボンリサイクル技術「CO2-TriCOM」(シーオーツートリコム)がNEDO公募事業に採択されました

https://www.energia.co.jp/press/2020/12589.html

・中国電力HP 灰カラ三姉妹

https://www.energia.co.jp/business/sekitanbai/sdgs/news_001.html

CO2を固定化する環境配慮型コンクリートの開発

「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」は、「CO2-Storage and Utilization for Infrastructure by COncrete Materials」の略称で、鹿島建設株式会社がデンカ株式会社、中国電力株式会社、ランデス株式会社とともに開発したコンクリートの固化過程でCO2を固定する技術である。コンクリート中のセメントの半分以上を化学工場にて発生する副産物(副生消石灰)を原料としCO2と反応・吸収し硬化する性質を持つ特殊な混和材(γ-C2S)や産業副産物などに置き換えることで、セメント製造時に排出されるCO2を大幅に削減する。

このコンクリートを高濃度のCO2と接触(炭酸化養生)させることにより、大量のCO2を吸収させることを可能にした。供給するCO2として火力発電所の排気ガス中のCO2を利用する技術も確立しており、産業副産物の有効利用と、コンクリートへのCO2の大量固定により、CO2排出量ゼロ以下を世界で初めて実現した。

 

CO2-SUICOMの概要

出典:鹿島建設Webサイト

CO2-SUICOMのCO2吸収・固定量

出典:鹿島建設Webサイト

 

配合の調整を通じたCO2吸収量レベルの違いに応じ、既に商品としてメニュー化しているが、現在、さらなるCO2吸収性能の向上や多様なメニュー化を通じた技術のさらなる普及に向け、関係機関と共同で炭酸化養生に必要となるCO2のバリューチェーンの多様化をはじめとして、材料、施工法、品質保証方法の標準化などに取り組んでいる。

CO2-SUICOMのグレードとCO2固定量の目安

出典:鹿島建設Webサイト

 

 

参照URL

https://www.kajima.co.jp/tech/c_sus_con/index.html

産業廃棄物由来カルシウムとCO2による炭酸塩製造

出光興産株式会社と日揮ホールディングス株式会社らは、2020年度からのNEDO研究開発委託事業で、廃コンクリートなどの産業廃棄物からカルシウムを抽出し、排ガス中のCO2と反応させて固定化させる技術の開発およびその普及を目指したプロセス実用化に取り組んでいる。炭酸塩化は、製品が従来のフィラー等の用途の他市場規模が大きいコンクリートへの混和等の建材用途が期待できるため、温室効果ガスの排出削減に対して非常に大きなポテンシャルを有しており、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高める加速炭酸塩化技術について試験・評価を進めている。本技術開発を通じて、原料調達から用途開発に至る幅広い領域で、社会実装に向け、積極的に取り組んでいる。

また、出光興産はボイラー排ガス中のCO2をコンクリート廃棄物の高濃度カルシウム廃水と反応させて固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)をアスファルト混和材に使用し、自社の石炭・環境研究所の玄関前に試験舗装(舗装厚4cm、面積500m2)を実施して、検証を行っている。

 

炭酸塩化によるCO2再資源化のイメージ

 

CO2固定化炭酸塩を用いたアスファルト試験舗装
出典:出光興産資料