大気中CO2の直接回収技術および太陽熱を利用したCO2回収技術

IPCCからの指摘にもあるように、気候変動の要因の1つとして、地下から石炭、石油、天然ガスといった炭素を掘り起こすことで発生する大気中のCO2濃度の上昇があげられています。2050年のカーボンニュートラルに向けて地下からの炭素に依存しない社会基盤や技術開発が進められる一方、完全にCO2の放出量をゼロにするために、大気中のCO2を直接回収、利用する技術であるダイレクト・エアー・キャプチャー(以下、DAC)が提案されています。しかしこの技術は、大気中の低濃度のCO2(400ppm)を回収するには、効率・コストの面で改善の余地があり、現在、高効率な材料やシステムが望まれています。
ウシオ電機株式会社はCO2の吸収の効率化を支援する吸収材の実装と、CO2の脱離の省エネ化を実現するための集光・集熱技術を活用し、協業先が保有する高効率ガス循環・熱交換システムと組み合わせることで、DACの装置化に取り組みます。

DAC装置は、「大気中のCO2のみを吸収するためのCO2吸収材」、「吸収したCO2回収に必要となる熱源(太陽光活用)」、「熱をCO2吸収材に伝える伝熱技術」、「制御技術」で構成されます。独自に固体化したCO2吸収材に、ウシオが開発中の円筒型太陽光集熱器を使って太陽光を効率よく熱に変換して電熱し、CO2を低エネルギーで回収します。

植物工場へのDAC装置の実装

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

SkyCarbon構想イメージ図

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

東京都立大学が中心に提案した DACによるカーボンステーション開発事業」が、東京都が実施する令和5年度「大学研究者による事業提案制度」に採択されました。ウシオは東京都立大学と共同開発しているCO2吸収材料の実装技術とそのシステムを提供し、DACによるカーボンステーションの事業化を支援します。

大気中のCO2を効率良く吸着・回収するDACのシステムと、回収したCO2を炭素資源に変換する電解システムを組み合わせた“カーボンステーション”を開発し、CO2排出量の削減と炭素資源供給を同時に実現するものです。ウシオは、前者のDACにおいて、CO2の吸収を効率良く行い、吸着したCO2を容易に脱離するシステムで支援します。

カーボンステーション:DACとCO2を炭素資源に変換する電解システムの組み合わせ

出典:ウシオ電機WEBサイト

 

参照URL

ウシオ、大気社と共に東京都立大学の「ダイレクトエアーキャプチャ―(DAC)」の研究開発へ参画

https://www.ushio.co.jp/jp/news/1002/2024-2024/501191.html

ウシオの技術が、東京都立大学のDACによるカーボンステーションの事業化を加速

https://www.ushio.co.jp/jp/news/1002/2024-2024/501197.html

東京都立大学、東北大学、東京大学による提案が 「東京都の大学研究者による事業提案制度」に採択 ~DACによるカーボンステーション開発事業~

https://www.tmu.ac.jp/news/topics/36434.html

陸域CCS/CCUSと組み合わせた国内ブルー水素製造事業

北海道三笠市では、未利用資源である石炭の地下ガス化や、木質バイオマスと露頭石炭の混合によるガス化により、水素を製造する事業に取り組んでいる。水素製造過程で発生するCO2は、かつての石炭採掘跡に圧入し貯留・鉱物化させるCCS/CCUSにより、CO2排出量実質ゼロを目指す。

石炭・木質バイオマスガス化イメージ

出典:三笠市HP

 

CO2固定イメージ

出典:三笠市HP

 

明治時代から石炭産業により発展した三笠市の地下には、多くの未採掘の石炭と、石炭の採掘跡が現存している。石炭はCO2を吸着する性質がある上、採掘跡の空洞は地圧によって潰れながらも空隙が多数存在する。これら地域の特性を活かして、CO2及びCO2と反応して固化するスラリーを圧入することで、CO2削減に加え、地盤の安定化に寄与する陸域CCS/CCUSを目指している。

三笠市では、これらのブルー水素製造を目指す取組みをH-UCG(ハイブリッド石炭地下ガス化)事業と称し、市の4大プロジェクトの一つに位置付けている。H-UCG事業が実用化されれば、「陸域CCS/CCUSと組み合わせた国内ブルー水素製造の地域モデル」として国内外の産炭地に技術展開を図りたい。また、H-UCG事業と他の4大プロジェクト(三笠ジオパーク、三笠高校・高校生レストラン、農業振興)とを相互に連携させ、新たな産業・雇用の創出とゼロカーボンシティの実現の両立を目指す。

三笠市ゼロカーボンシティ構想2050

出典:三笠市資料

 

 

なお本事業は「三笠市 H-UCG によるブルー水素サプライチェーン構築実証事業」として、2023年11月、NEDOの「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」に採択され、令和7年度までの実証を目指す。

 

参照URL

https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/hotnews/detail/00014328.html

カーボンニュートラル技術

BASFはCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)に関わるカーボンニュートラル技術を提供しています。

OASE®(オーエイス® )は化学吸収法によるCO2回収技術であり世界中で500件以上の採用実績を有します。

国内外のCCSおよびCCUプロジェクトにおけるCO2分離回収技術としても広く使用されています。

Sorbead®は高性能、長寿命の脱水吸着剤で、低温再生可能な特徴を持ちます。

Elastpor®は極低温用途に適したウレタン断熱システムです。

触媒事業ではCO2を化学品変換する触媒を開発しています。

BASFはカーボンニュートラル目標の達成を様々な技術ソリューションで支援しています。

 

BASFカーボンニュートラル

出典:BASFジャパン資料

 

参照URL

https://www.basf.com/jp/ja/who-we-are/sustainability.html

https://www.basf.com/jp/ja/products/product-list/intermediates/gas-treatment.html

 

マイクロ波によるCO2吸収焼結体(CO2-TriCOM)の開発

廃棄物にCO2を「取り込む」ことで新たな製品として生まれ変わらせる画期的なカーボンリサイクル技術です。

NEDO※が実施する「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発」の委託事業として、2020年7月から国立大学法人広島大学、中国高圧コンクリート工業株式会社(再委託先:中部大学)と共同で実施しています。

混合した材料にマイクロ波を照射することで,粉状の材料が溶融焼結します。CO2をその過程で吸収し,焼結体に固定化します。

※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

 

 

参照URL

・プレスリリース 石炭火力発電分野のカーボンリサイクル技術「CO2-TriCOM」(シーオーツートリコム)がNEDO公募事業に採択されました

https://www.energia.co.jp/press/2020/12589.html

・中国電力HP 灰カラ三姉妹

https://www.energia.co.jp/business/sekitanbai/sdgs/news_001.html

微生物燃料電池を利用した二酸化炭素ガス回収・固定化技術

新日本空調株式会社は2021年より国立大学法人東北大学(総長 大野英男)大学院工学研究科の佐野大輔教授とともに二酸化炭素の回収・固定化技術の実用化研究を進めている。
本研究では、アルカリ性溶液に二酸化炭素を化学反応で吸収させる化学吸収法において、微生物燃料電池(Microbial fuel cells:MFC)を用い、独自の手法でアルカリ性溶液を生成している。MFCとは、微生物の代謝能力を利用して有機物などを電気エネルギーに変換する装置である。これまでMFCは、下水や汚水などに含まれる有機物を供給することで、有機物の酸化分解(水処理)を行いつつ、発電を行なうことを主な目的として研究開発が進められてきた。

 

空気カソード式MFCによる大気中二酸化炭素固定の模式図

出典: 新日本空調

 

東北大学での実験状況

出典: 東北大学

 

新日本空調と佐野教授らのグループは、エアカソード型と呼ばれる、大気中の酸素を直接利用する方式のMFCを運転する過程で、アルカリ性溶液が生成されることに着目し、ここに二酸化炭素を反応させることで、二酸化炭素ガスを化合物(炭酸塩)として回収・固定化する手法を考案した。この手法によって、①有機物の酸化分解(水処理)、②発電、③二酸化炭素回収・固定化の3つの効果が期待できる。

 

また、本研究は2022年に一般社団法人カーボンリサイクルファンドからの研究助成を受けている。この研究助成を活用し、 2023年6月から実際の汚水処理設備で有機物をMFCに供給し、連続運転を行い、その運転データを取得する検証試験を実施した。

 

参照URL
https://www.snk.co.jp/news_info/news/?itemid=452&dispmid=892&TabModule1201=1

CO2を吸着しガラスの原料へカーボンリサイクル

レブセルでは空気清浄機やエアコンなどの機器類に弊社独自のCO2吸着フィルターを搭載することで、身近な場所からでも二酸化炭素を回収できるDACシステムを提案しています。第1弾として日本エアーテック株式会社様との共同開発で、日本エアーテック社製のHEPAフィルター付空気清浄機に我々のCO2フィルターを搭載することでDAC機能付きの空気清浄機として発売を開始します。我々のフィルターは化学反応で二酸化炭素を吸着固定しガラスの原料に変化する特徴が有る為、将来はCO2を吸着固定した使用済みフィルターからガラス製品を作り、DAC由来のエコなガラス製品として販売できるような仕組みを作りたいと考えています。

 

CO2フィルター

出典:レブセル資料

 

ガラス化に成功

出典:レブセル資料

 

フィルターの搭載先としては、空気清浄機やエアコン、換気扇などの空調機、吸気や排気などのダクト内など様々な場所が考えられます。
また、設置場所としては、店舗、事務所、ホテル、病院、学校、体育館、映画館、工場、その他、自動車や電車などのモビリティーにも可能性が広がると考えています。

 

ガラス製品については、コップやお皿、瓶ガラスなどから始まり、将来は、板ガラスや自動車のガラス、太陽光パネルなどのガラスに利用できればと考えています。
レブセルでは、CO2フィルターの搭載機器、設置場所、レコガラスの製品化など、協業先を募集しています。
レコガラス:リサイクル・エコ・ガラスの略で商標登録済

 

DAC機能付き空気清浄機

出典:レブセル資料

 

 

参照URL
https://www.revcellcarbonoffset.com/

そうまIHIグリーンエネルギーセンター

IHIは東日本大震災の復興から地域経済再生のための新しい街づくりを目指して,福島県相馬市と連携し、スマートコミュニティ事業拠点「そうまIHIグリーンエネルギーセンター(以下、「SIGC」)」を2018年4月から運営している。下図に示すようにSIGCは太陽光発電による再生可能エネルギーをエリア内で地産地消し、さらに、防災機能の充実、地域活性化を目指すことをコンセプトとしている。

 

スマートコミュニティモデル
出典:IHI資料

 

2020年9月、SIGCで生産・貯蔵されたカーボンフリー水素を技術実証に活用する水素研究棟「そうまラボ」を同センター内に新設された。そうまラボでは、カーボンフリー水素などを使用し、メタンやアンモニア、オレフィンなどを合成する「Power to X」技術を検証することを想定している。そうまラボに設置したメタンを合成する試験装置は、水電解で得た水素とCO2を原料にして12Nm3/hのメタンを合成できる。

 

 

そうまラボ(左)と同所に設置された12.5Nm3/h規模のメタネーション設備(右)
出典:IHI資料

 

政府が宣言している2050年までのカーボンニュートラル化を達成するためには、地域再エネの有効活用とカーボンフリー水素のバリューチェーン構築が重要な役割を担うと考える。SIGCで培った地産地消エネルギーマネジメント技術とPower to X技術は、それらに欠かせないキーテクノロジーであるため、IHIはスマートコミュニティモデルの普及・拡張に取り組んでいる。

 

【参照URL】

https://www.ihi.co.jp/ihiing/decarbonization/20220509-01.html